2024年6月22日土曜日
METライブビューイング『蝶々夫人』を観ました。

ピンカートンが良かった。さすがアメリカの舞台なのでアメリカ人の解像度は高い。演じたのはジョナサン・テテルマン(テノール)。このひと気に入った。歌は素晴らしいし、軽薄で調子乗ってるハンサムの役にピッタリだった。ピンカートンは悪人というよりダメ男のカテゴリーに入ると思う。新妻を残して自分は逃げちゃうあたり、意気地なし過ぎて頭抱えちゃうよね。
蝶々さん役はアスミック・グリゴリアン。歌も演技も申しぶん無かったです。が、日本人としてはどうしてもオモシロ衣装が気になってしまい…😅リアルでなければダメとは思ってないですよ(そもそも日本人もアメリカ人もイタリア語で歌ってる世界だし)でも気になっちゃって。あと、さすがに15歳には見えない。遠目からならいけるかもだけど、ライブビューイングだからなー。
スズキ、可愛かった。日本のおばちゃんとしてあまり違和感無かった。おばちゃんは世界共通なのかも知れん。着物も似合ってました。
ヤマドリさん、好き。この人の服もヘンなんだけど、コミカルな役柄に合っていて、むしろ良かった。お金持ちな感じ出てた。アジア系の歌手でしたね。
なかなかにトンチキジャポネな衣装でしたよね。いつの時代だよ〜😂嫌いじゃないけど無駄に面白過ぎたか。蝶々さん、和洋折衷のようなベトナム風?ぽいの着てました。私の解釈によれば、あれは蝶々さんが考える”アメリカの服”。自らキモノを縫ってリメイクしたもの。”アメリカの家”に住み子供にもセーラー服を着せてる蝶々さんはもう日本のキモノは着ない、ということなのでは(深読み)。
演出は、シルエット使いが良かったです。漆塗りのような舞台への映り込みも、きれいだった。
人形はどうなんだろう。インパクトが強すぎて、意識がそっちに持っていかれ過ぎたかも。映画『アネット』を思い出しました(『アネット』面白いよ。変だけど🤣)
パタパタする鳥の折り紙はどうやってたのかな?
『蝶々夫人』は生の舞台を観たことがあります。あの時は嗚咽しそうなほど泣きました。今回ウルッとは来たけどそこまでではなかった。やはり生で観るのにはかなわないかなー。2度目ということもあるし。
久しぶりに観たら忘れてたところがいっぱいあって、まず「ある晴れた日に」が歌われるのが意外と早かった。それとピンカートンが思ったより多く、しかも思ったより良い曲を歌ってた。蝶々さんが15歳なのにもビックリした。
単なる悲恋物語じゃないですよね。女が自立するすべが殆ど無い時代だから、生活がかかってる。捨てられて芸者に逆戻りなんて、誇り高い蝶々さんには耐えられないから死ぬしかない。甘美な音楽に包まれているけど、切実な経済の話でもある。貧しい国の人が金持ち国の人に蹂躙される話っていう面もある。それは今でも終わってなくて、貧しい国から出稼ぎにきた人がひどい扱いを受けたりとか聞くでしょう。『蝶々夫人』なんて今の時代に合わないと言う人もいるけど、いやいやこれは今も続いててけっこう普遍的な話だと私は思います。
ところで私が失業してなかなか仕事が決まらず困ってた時のこと。相談した人に「結婚しちゃえば?いい人紹介してあげるよ~」なんて言われた。おまえはゴローかよっ💢.…ヤマドリの場面でそんな胸糞な記憶がよぎったりしました。
幕間には次のシーズンの予告が流れました。ダーヴィドセン(ソプラノ)の出演が多いな。今をときめくスターというところでしょうか。とりあえず現代もののジャニーン・テソーリ『Grounded』は観たいです。